現場の保育士と本部スタッフを安心で繋ぐ
障害児訪問保育アニーでのクラウドカメラの使い方

アニーは認定NPO法人フローレンスが展開する日本で初めての障害児訪問保育サービス。 保育スタッフが障害のあるお子さんのお宅に伺い、マンツーマンで保育を実施します。 保育中は家の中での遊びやお散歩のほか、療育施設への送迎や地域の保育園とも連携し、 慣れ親しんだ環境で個別に対応が必要なお子さんそれぞれに合った保育と訪問看護サービスを提供しています。

(取材:2017年1月)

導入の決め手

  • スマホで映像をいつでも、どこでも、気軽に確認できたから
  • 訪問先でのカメラ設置が簡単にできるから
  • タイムラグがなく、遠隔地からリアルタイムで現場の確認ができるから

導入目的

  • チャットを利用してテキストでのコミュニケーションは現場が見えづらかったため
  • スタッフが増え、よりコミュニケーションを円滑にしたかったため
  • 何か起こった時に、リアルタイムで現場を確認したかったため

導入した結果

  • いつも本部が見てくれている安心感が現場スタッフの支えになった
  • 言葉で伝えることが難しい問題を、映像で伝えることができるようになった
  • 現場で起きた嬉しい出来事を映像で共有することができるようになった
  • 本部と現場のコミュニケーションが円滑になった

「安心」と「喜び」のどちらも共有する。セーフィーがサポートする、障害児訪問保育「アニー」の現場

アニーを展開するのは、「親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する」というビジョンを掲げる認定NPO法人フローレンス
病児保育、待機児童などの様々なソーシャルイシューを解決する事業を展開されています。

アニーは各家庭に保育スタッフを派遣するというサービス形態です。「訪問保育の現場を遠くからでも見守りたい」という想いから、セーフィー対応カメラを20台導入されました。訪問先の各ご家庭にカメラを設置し、保育スタッフの方のサポートや、お子さんに何かあった時の備えとして活用いただいています。

セーフィー対応カメラの活用方法について、認定NPO法人フローレンス 障害児保育事業部の江原雄二さん、林千恵さんにお話をお伺いしました。

障害児の母親が安心して働ける社会を目指して

「障害児の母親の常勤雇用率は、健常児の母親の約7分の1である」
「障害児を持つ親は、シングルインカムであったり、医療費や療育費がかかり、収入面でも厳しい状況に置かれている」

この社会課題に対して、事業を通じた解決を目指すのが、障害児訪問保育を提供する「アニー」です。

アニーでは、居宅訪問型保育制度と医療保険制度を組み合わせることで、通常の保育園と同程度の価格で、障害児向けに保育サービスを提供することを可能にしました。保護者は、世帯収入と連動した保育料と保育スタッフの交通費を支払うだけで、月曜日から金曜日の8:00〜18:00のうち最長8時間の保育を受けることができます。
ご家庭での保育だけではなく、近所の保育園に遊びに行く「交流保育」などのサービスも提供。現在は東京23区の一部のエリアで展開しており、今後エリアを拡大していく予定です。

アニーの保育スタッフは全体を見渡しフォローをする保育SV(スーパーバイザー)の下にチームリーダー、その下に数名の保育スタッフがいるという仕組みで、もし誰かが体調を崩しても、相互にフォローができるチームを構築しています。
保育スタッフは皆、安心・安全な保育を実現するために、約2ヶ月の研修を受けるとのこと。
保育の現場では、保育スタッフだけではなく、看護師も巡回することで障害児の健康状態の把握に努めています。

本部と現場でコミュニケーションの齟齬が起きてしまうという課題を抱えていた

アニーでは、訪問保育先の各家庭にセーフィー対応カメラを置き、本部と現場のスタッフ同士のコミュニケーションに活用しています。セーフィー対応カメラが導入されたのはアニーの事業が始まってから約3ヶ月後の2015年7月でした。

江原さん:「カメラを導入する前は、Googleハングアウトを活用して、現場とチャットでコミュニケーションをとっていました。しかし、テキストベースのコミュニケーションでは、保育の始めや終わりの時間に報告が来ても、現場の様子が見えなくて遠く感じるという課題を抱えていたんです。何か問題が起きた時も文字だけでは伝わりづらく、写真を撮ってもタイムラグが生じてしまう。何か解決する手段がないか探していた時に見つけたのがセーフィー対応カメラでした。

本部と現場のコミュニケーションのずれは、組織の人数が少ない間は解決できる問題でした。アニーが始まった頃は、現場と本部のスタッフが定期的に会う時間を確保し、課題を共有することで意思疎通を図っていたそうです。しかし、当時は3名だったスタッフの数も今では20名を超え、よりコミュニケーションを円滑に進める必要性が出てきました。
そこでセーフィー対応カメラを導入。本部と現場のコミュニケーションは大きく変わっていきます。

カメラが本部と現場の距離をグッと短くする

現在アニーでは、9時30分、11時30分、15時30分にリマインドがチーム全体に届き、その時間にセーフィー対応カメラの映像を確認し、保育スタッフの状況を確認します。保育SV(スーパーバイザー)もチームリーダーも現場に出ていることが多いため、PCだけではなくスマートフォンからも映像を気軽に確認しやすいことが、とても重要でした。

江原さん:「自宅でのマンツーマン保育なので、万が一保育スタッフに何かあれば、お子さんが長時間放置されてしまいます。なので、1日に3回はチーム全員で映像を確認することを徹底しているんです

サービス開始時から現場に入り、現在は保育SV(スーパーバイザー)を務める林さんは、セーフィー対応カメラを導入した当時のことを次のように振り返ります。

林さん:「カメラが導入されたことで、とても安心しました。現場でお子さんの体調に異変がなくても、目の前で起きていることを自分しか知らないという状態は心細かったんです。いつも本部の方が見てくれているという安心感が支えになりました。また、現場で何か問題が起きた時に、自分の対応が悪かったのか、そうでないのか、言葉で伝えることは難しいことでした。映像を見てくださいと、親御さんに渡せるデータが記録されているので更に安心でした。

セーフィー対応カメラは保育スタッフを監視するためではなく、保育スタッフを守るためのもの。保育スタッフの方を安心させるためだけではなく、現場の喜びを共有するツールとしても活用しているそうです。

林さん:「子どもは毎日成長しますよね。きっと、その日その日に成長の喜びがあるはずで、現場のスタッフも嬉しかった出来事を自分ひとりだけではなく、他の人にも共有したいんです。カメラがあると、現場から本部にその情報を共有しやすいので、嬉しいですね。

本部で通話をして、現場で起きた嬉しい出来事を伝えることも増えたのだとか。

カメラを設置する上で難しいのが、保護者の方の同意を得ること。しかし、カメラ設置先のご家庭の方からも「つけないでください」と言われることはなく、導入も順調だそうです。

アニーの事業説明用の資料にも、セーフィーの説明が丁寧に記載されていました。

何も問題が起きなければ、それが一番いい状態です。しかし、過去にお子さんの症状が悪化してしまった時にも、セーフィー対応カメラがその現場を救ったのだと、林さんは語ります。

林さん:「過去に一度、お子さんの症状が重くなってしまったことがあって。カメラがあることで、保育スタッフとスムーズにコミュニケーションが取れて、とても助かりました。カメラ自体を動かせるので、その時はお子さんの顔にカメラを近づけ、症状の確認をすることができました。看護師が映像を見ながら、iPhoneのスピーカーから指示を出せたことで、事なきを得たんです。もし映像がなかったら、どうなっていたんだろう。今思い返しても、怖くなります」

映像を介して看護師のひとりが対応している間に、別の看護師が現場に向かうことで、チームとして効率的に動けるようにもなったのだとか。今後は、チーム内でご家庭の映像の共有や、親御さんへの映像を提供も視野に入れていると、江原さんは語ってくれました。

映像を参考に、自分の保育もより良いものにしていきたい

アニーの皆さんへの取材後は、実際にセーフィー対応カメラを設置いただいているご家庭に訪問し、保育スタッフの方とお子さんの保護者の方にお話を伺いました。

「本部の方が見守ってくれていると思うと、安心するんです。」
保育スタッフさんに部屋にカメラがあることについて尋ねたところ、こう答えてくださいました。
「安心感だけではなく、喜びも共有できるんです」と、言葉を続けます。

「外に出られない雨の日は、家にいることが多いんです。子どもとの遊びを工夫していると、本部の方から『あの時楽しそうだったね』と言われることがあって。そうやって伝えてくれると、やる気にも繋がるんです」

ご家族のプライバシーに配慮するために、保育時間が終了したらスタッフが必ずカメラの電源を切る。また、カメラカバーを用意し、カメラを使っていない間はカバーをかけるように徹底しておられました

続いて、ご家族の方にお話を伺いました。訪問したご家庭のお子さんは、胃食道逆流症という障害を抱えています。胃に入ったものを吐いてしまう障害で、お腹に穴をあけて、経管栄養チューブで身体に栄養を入れているのだそう。

「チューブがついていると入園は難しい」と、保育園に入園の相談に行っても、すべて断られてしまった経験から、現在障害児向け保育「アニー」を活用しています。

ご家族の方「見た目ではわかりにくい障害のため、理解されにくいこともあって。アニーさんのおかげで、時短でも仕事を続けられているのでとても助かっています。アニーならば、同じ境遇の他の親御さんの声が聞けたりするのがいいですよね。アニーでは定期的に親や障害のある子どもの集まりを開催してくれていて、横の繋がりができると、子育ての悩みもシェアできて嬉しいですね」

現在は、カメラの映像はアニーの本部、そしてスタッフ間だけで保育スタッフの見守りとして活用されていますが、もし今後、家族の方にも映像をシェアすることになったら、安心ですか?とお聞きしました。

ご家族の方:アニーの保育スタッフさんを信用していますので安心感は変わりません。でも、もし映像で確認できたら、プロの保育スタッフさんがどのように子供と遊んでいるか等は、参考になるかもしれないです。映像を見て、それを真似して普段の子育てにも活かせるのかなって。また、いつも保育スタッフさんにその日どんなことをしたのかを写真で共有してもらっていますが、録画されている映像なら、よりリアルに共有できて良いかもしれませんね」

「子どものはじめて」そんな嬉しい瞬間も、セーフィー対応カメラなら記録できるのかもしれません。

※本記事に掲載している企業情報、所属及びインタビュー内容は、2017年7月公開当時のものです。

お話を伺った方

認定NPO法人フローレンス 障害児保育事業部 江原雄二さん