眼のしくみ〜なぜものは見えるのか〜

山内宏泰さんと「見える」の歴史を読む

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Writer: 山内宏泰

2020/09/30

眼のしくみ〜なぜものは見えるのか〜

「眼」のシステムはあまりにも完璧で複雑です。
これから「見える」歴史を深掘りするにあたり、まずは「眼」がどんな仕組みになっているかを美術・文学に造詣が深い山内宏泰編集長と探っていきます。

チャールズ・ダーヴィンから見ても説明が難しかった「眼」のシステム

生物史上で最も成功した生存戦略の方法、それが眼を持つことだったと先に触れた。
戦略として効果抜群だったからとはいえ、眼のシステムとは相当に高度で複雑なもの。
よくぞこんな器官を体内でつくり出せたものだと感心してしまう。
そのように驚いたのは、19世紀に進化論を唱えた、かのチャールズ・ダーウィンも同じだったという。

チャールズ・ダーヴィン

チャールズ・ダーヴィン

Charles Darwin (1809-1882)” Copied from University of Texas Portrait Gallery. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.より)

生物がいまあるような姿でいるのは、環境に適用しようとして何代にもわたって自然淘汰を繰り返し、必要に応じて小さい変化を無数に経てきた結果であるというのが、ダーウィンの打ち立てた生物史の考えだった。
キリンの首やゾウの鼻があれほど長いのだって、環境に適応した優位な個体が生き残るという過程を幾度も踏んだと思えば、なんら不思議ではないのである。

そんなダーウィンも、眼の発達をどう説明するかについては大いに悩んだ。
眼はダーウィンから見ても「完璧にして複雑きわまりない器官」であり、「比類のないしくみをあれほどたくさんそなえている眼が、自然淘汰によって形成されえたと考えるのは、正直なところ、あまりに無理があるように思われる」と、主著『種の起源』で弱音まで吐いている。

生物の一種たる人間も神がつくったものではなく、サルの仲間から徐々に進化したのだと唱え、同時代の多くの人々を敵に回しながらも自説を堅持したのがダーウィンだった。彼をして大いに惑わせた眼の構造を、光が通っていく順番に見ていってみよう。

光から視覚情報を受け取る「眼」のしくみとは

「見える未来文化研究所」眼のしくみ〜なぜものは見えるのか〜

外界を進んできた光が眼に届くと、まずは結膜と出合うだろう。
瞼の裏側や白眼部分の最も表面にある薄い粘膜だ。眼が赤くなり痒くなると、結膜炎かもしれないなどというけれど、これは表面のこの膜が荒れて傷んでしまって引き起こされる症状のこと。

結膜の内側に、角膜と呼ばれる厚い層がある。内側の眼球を保護しつつ、眼に入ってきた光線を屈折させて集約するレンズ機能も果たす。
表面は涙の層になっていて、つねに濡れている状態を保つ。
生物はその昔、水中で暮らしており、人間の祖先もそうだった。
眼の機能は水中生活の時代にできたので、水分に包まれている状態を基本形として設計されている。
人間の眼は絶えず表面を水分で覆っていなければならず、涙で角膜を濡らしているのだ。

角膜を通り抜けた光は、身体内部への入口たる瞳孔へと至る。
人の眼の黒眼にあたるのが虹彩で、その中央のよりいっそう黒い部分が瞳孔となる。

瞳孔部はぽっかり穴が空いており、人体の奥へとつながっているから、底抜けに暗くて濃い黒色に見える。
瞳孔を抜けると水晶体にぶつかる。両凸レンズ型で厚みがあり、カメラでいえばレンズにあたる部位となる。
機械のカメラと異なるのは、水晶体は弾力性があってかたちが可変なこと。
厚くなったり薄くなったりする。
周りにある毛様体筋によって引っ張られたり緩められたりすることでかたちを変え、ピントを合わせる。

水晶体をくぐり抜けると、球形の空間が広がっている。ここはゼリー状の硝子体で満たされている。

球体の内側表面を覆っているのは網膜で、ここが光の中に含まれている情報をキャッチする肝だ。網膜は10の層に分かれていて、主に3つの機能で構成される。

まず、光を感じる視細胞がある。明るさを感受するのが桿体細胞で、かたちや色を読み取るのが錐体細胞である。
これら視細胞の働きを集約する細胞が集まっているのが、感覚網膜。
さらには視細胞へ良質の栄養素を送り込む網膜色素上皮細胞があり、これら3つでかたちづくられる網膜が、光から視覚情報をしっかりと受け取るようになっている。

眼の最奥部からは視神経が伸び、脳へとつながっている。網膜で受け取った情報が集約されて視神経を通り脳へ送られ、そこでの解読を経て、ようやく頭の中で像が結ばれることとなる。

生命体の進化により生み出された「眼」

たしかにこれだけ複雑なしくみを持った眼という存在は、進化論的な微々たる変化の積み重なりで生み出せるものなのかと疑問が湧いてきてしまう。でも、これが案外できるようなのだ。
一世代でほんのわずかな進化をすると仮定してシミュレーションすると、50万年以内で現行の眼のシステムはできあがるという研究結果もある。
50億年に及ぼうかという生命史的なタイムスパンで考えれば、50万年なんて一瞬である。

数限りないトライアンドエラーを繰り返したとしても、進化によって眼が誕生するというのは、さほど不思議なことではないのだった。

著者紹介 About Writer

山内宏泰
ライター。美術、写真、文芸について造詣が深い。
著書に『写真のフクシュウ 荒木経惟の言葉』(パイインターナショナル)『写真のフクシュウ 森山大道の言葉』(パイインターナショナル)『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)など。
「見える未来文化研究所」の共同編集長。
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